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SPORT ANGLERS' DEBATE
バーブレスの倫理学
The Ethics of Barbless

誰もが一度は聞いたことがある「バーブレスフック」という言葉。でも、実際に使ったこと、ありますか? 「バレやすい」とか「結局ハリを刺すんだから、バーブレスでも同じだ」とか、そんな声をよく耳にしますが、本当にそうでしょうか。意外と、そう自分に言い聞かせて見て見ぬふりをしていたり、あるいは、ただ面倒くさいだけだったり。もし仮にアナタがそんな1人だとしても結構です。少なくとも、このページに目を止めてくれたアナタは、「バーブレス」に何らかの関心を示しているわけですから。そのまま少しお付き合いください。

 
 

 

USE OF BARBLESS HOOKS
キャッチ率を上げたいならバーブレス

Lefty Kreh

 

バーブ付きとバーブレス。この2つを3年に渡り比較してみた結果…。

私がバーブレスフックを使用し始めたのは1952年にまでさかのぼる。当時、私はプラグキャスティング用のスピニングタックルとフライタックルの両方を使っていたが、これらすべてのフックをディバーブ(バーブを潰すこと)していたわけではない。たとえば、6Lbテストラインを巻いたスピニングタックルが2セットあったとすると、1本にバーブ付きのルアー、そしてもう1本にバーブレスのルアー(バーブ付きのものと同じルアー)を結び、比較しながら使っていたのだ。
当時、バーブレスフックはバラしやすいとして多くの人々に敬遠されており、私自身にしても、通常のバーブ付きのルアーやフライよりも、キャッチ率は落ちるだろうと予測していた。ところが、いざバーブレスを使ってみると(私は3年間に渡り、この比較実験を続けた)、キャッチ率は下がるどころか、上昇したのである。
ただ唯一ベイトフィッシングの場合だけ、バーブレスは適さないようだった。というのも、バーブがないために、エサがフックから滑り落ちてしまうからである。しかし、この場合でも、バーブを完全に潰すのではなく、バーブの高さを若干低くしてやることで、キャッチ率は上がった。

 

最大の利点は刺さりやすさ、そして安全性。

実際、バーブレスフックの利点は数え上げれば切りがない。その中で私が最も重要ではないかと感じているのは、フッキングの際、魚の口に刺さるフックの体積の違いである。バーブ付きに比べて、バーブレスフックが突き刺さる分量は少なく、その分だけフックが刺さりやすいのだ。
それに加えて、私はもうひとつの利点も強調したい。それは他人や自分自身にフックを刺してしまった時のことだ。このような時でも、バーブレスフックであれば簡単に抜くことができる。個人的な経験を恥ずかしながら紹介すれば、私は生涯で8人のアングラーを釣っている。こんな時は、ほんの小さなバーブがいかにしっかりと肉を噛んでいるのかが痛感できる。特に自分の身体であれば……。
また、法によりバーブレスフックの使用が義務づけられているキャッチ&リリース区域では、魚の生存率(リリースされた魚が生き残る率)が高いという調査結果もアメリカでは出ている。

ターポンやビルフィッシュでは、ギリギリまでバーブを削る。

フィッシング・セミナーでは(淡水と海水の両方で)、実際に魚をフックアップし、ロッドを地面に置いて(魚が大きくなければだが)、バーブレスで掛かった魚でも簡単にはバレないことを受講生の目の前で実演してみせるようにしている。ラインの周囲を泳ぎ回る魚を、受講生はバレているのではとジッと見つめているが、やがて私がラインを巻き取り、魚をリリースするのを見て一様に驚くようだ。ちなみに実演中に魚がバレたことは一度もない。
だが、ビルフィッシュとターポンに関しては、バーブ付きのフックも使用することがある。どちらの魚も激しく首を振りながらジャンプするので、この時はたしかにバーブが効果を発揮する。しかし、この場合にも、ファイル(ヤスリ)を使って、ギリギリのところまでバーブを削るようにしている。
今日、日本製のフックは世界で最も広く使用されている。高品質の金属を化学研摩しているのはもちろんのこと、多くのアングラーに好んで使用される主な理由は、その小さなバーブにあるようだ。事実、マスタッドのフックでさえ、10年前の製品と比べれば、バーブがかなり小さくなっていることに気付くだろう。
私の結論はこうだ。キャッチ率を上げたいのなら、バーブレスを使うこと。これが、40年以上バーブレスを使ってきた私の結論である。

 

 

プラグのトレブルフックは、
バーブレスのほうが良いのではないか

西山徹

淡水のトラウトフィッシングから始まったバーブレス。
ソルトウォーターでの普及はというと……。

バーブレスフックは魚の口に与えるダメージが少なく、リリースもしやすい。だからこそキャッチ&リリースの推進者たちは、バーブレスの使用を執拗なまでに訴える。そもそもバーブレスフックという考え方は、キャッチ&リリースと共に、淡水のマス類を対象とするフライフィッシャーマンたちから出てきたものだ。野生マスと釣りが共存するためにはフライフィッシングでキャッチ&リリースするのが最適であり、キャッチ&リリースするにはバーブレスフックがより適している、という考え方である。

 
 

現在、その思想は、その効果と共に広く認められて、野生マスの釣り場ではかなり普及しつつある。さらには野生マスの釣り以外にも波及してきて、海釣りでもどうかと考慮されるようになり、キャッチ&リリースのほうは海でもかなり認識されるようになった。
キャッチ&リリースの認識が進むと、当然の成り行きとしてバーブレスフックの問題が持ち上がる。ところがバーブレスフックの普及は、淡水でのフライフィッシングを少しはみ出した辺りで、どうも足踏みをしている。バーブレスフックの効果は確かに理解しやすいのだが、対象魚がより大型化する段階で、誰もが“ちょっと待てよ”と思案するらしいのである。

トレブルフックが2本以上付いたプラグでは、たとえバーブレスでも、まずバレない。
そしてハリ外しも驚くほど素早くできる。

フライフィッシングが大好きなボクとしては、バーブレスフックの使用を、まずマス釣りから始めてみた。実際に使用してみると、バラシは予想以上に少なくて逆に驚ろかされたが、やがて若干の問題点も出てきた。最初はミッジ、つまり極小フライの釣りだった。フックサイズにして18番以下になると、バーブレスフックのバラシが徐々に目立つようになったからである。やがて分かったことは、大型のよくジャンプする魚に対して、フックサイズが小さすぎると、どうもバラシが増えるらしい、ということである。
その後、フライのエキスパートたちのフライボックスを注意して観察してみると、16番以上のフックにはバーブレスが目立つけど、18番辺りから下の小さいフックは、ほとんどの人がバーブを残していた。対象魚に対して、フックサイズがあまりにも小さいと、バーブレスでなくともバラシは増える。フックサイズが極端に小さいと、例えバーブがあったとしても魚に対するダメージは小さい。そんなところから、ごく小さいフライに関してはバーブ付きのフックを使用するフライフィッシャーマンが多いのだろう。
海ではほとんどの場合、対象魚のサイズに対してフックサイズはかなり小さい。シングルフックの釣りに関しては、キャッチ&リリースを前提にしたとしても、それほど神経質になる必要はないのではないか。気になるのはトレバリーやシイラなどの、大型プラグによる釣りである。プラグには、ご承知のように巨大なトレブルフックが2本以上付いている。バーブも大きいので、ヒットした魚をネットなどで取り込もうものなら、フックを外すのは大騒動だ。うまくネットから取り出したとしても、トレブルフックが2本ともガッチリ掛かっていると、ちょっとやそっとでは外れない。無理やり、半ば強引に外そうとすると、魚の口の周りはボロボロで傷だらけになることがある。夏の相模湾などでは、口の周りが傷だらけで、中には口の裂けかけたシイラがよく泳いでいる。これなども、ルアーの巨大なトレブルフックによるダメージであることが多いのではないだろうか。
最近ボクは、この種のトップウォーターフィッシングでは、プラグのフックを全てバーブレスにするようにしている。トレブルフックが2本以上付いたプラグの場合には、ヒットした魚が飛ぼうが跳ねようが、バーブレスでも少々のことではまず外れない。しかも、取り込んだ後のハリ外し作業は、驚くほど楽で素速くできるから、魚たちへのダメージもかなり少ない。とにかく、大型プラグの釣りではバーブレスによるバラシはほとんど起きないので、この辺りからバーブレスフックと取り組んでみることをお勧めしたい。

 

 

KEEP or RELEASE
リリース前提ならバーブレスを!

石丸益利

 

フックが魚に与えるダメージという点では、ファイト中よりも、
むしろランディング後の、フックを外す際に関わる問題のほうが大きいのでは?

フックに付いているバーブ(カエシ)の意味は、釣りをする人なら誰でも知っている。魚に掛かったフックが外れないようにするためのものだ。魚を捕獲する目的で行なう釣りの場合、ハリにかかった魚を確実に釣りあげるために、バーブはとても重要なものとなる。だが、キャッチ&リリース(タグ&リリース)の釣りの場合は、バーブが魚に与えるダメージを大きくしてしまうという事実を認識する必要があるだろう。
たしかに、魚にフックを掛けるという点では、たとえバーブレスフックであっても魚体をキズつけることに変わりはない。だが、ここで言うダメージとは、魚からフックを外す際に与えてしまうダメージのことだ。たとえば、口に掛かったフックを外す時、プライヤーなどでフックを挟んで力まかせに取ろうとすれば、口の皮や肉を切断してしまうことになる。そのように傷つけたり、顎の骨を外してしまったり、破壊してしまったりしては、その魚をリリースする意味がなくなってしまう。特に、ルアーを呑み込まれて、フックがエラや口の奥深くに刺さってしまった時などに、無理してそれを外そうとすれば、エラを切ったり、内蔵をキズつけてしまう。これは魚に致命的なダメージを与えることなる。このような場合に考えなければならないのは魚体のキズだけではない。仮に、なるべく魚をいたわりながらフックを外したとしても、このように外しにくい所にフッキングしていれば、それを外すのに時間がかかってしまうだろう。つまり、魚を長時間水中から外に出して手でつかんだり、押さえつけたりするわけで、その結果、魚を殺してしまう場合さえある。
このように、バーブ付きフックを使った時には、バーブレスフックを使った時よりも、魚に対してより多くのダメージを与える可能性が強くなるのである。あのような小さなバーブがそれほど大きな意味を持つというのは信じられないかもしれないが、一度でも自分の体にバーブ付きフックを刺した経験のある人には、この小さなバーブの威力が十分に分かると思う。暴れる魚の口からフックを外そうとして、遊んでいるフックを手や指などに刺してしまった時、フックがバーブまで完全に入ってしまっていれば、力づくで引っぱってもなかなか外すことはできない。皮膚を切開するか、フックを反対側に貫通させてバーブの所でフックを切断して外さなければならない。バーブは、魚にとっても、また時として人間にとっても、大きなダメージを生み出す原因となるのだ。

はたしてバーブレスは本当にバレやすいのか?
バーブレスのメリットとデメリット

しかし、これまでに書いてきた様々な問題点は、バーブレスフックを使うことによって、その大部分を解決することができるはずだ。とは言え、バーブレスフックを使った場合、せっかくヒットした魚がバレ易くなってしまうのではないかと心配する人も多い。たしかに、バーブがなければフックは簡単に抜けてしまうのだが、ラインを弛ませないようにロッドやリールを的確に操れば、そう簡単にフックが外れることはない。例えば、スレバリを使うヘラブナ釣りを考えてみれば分かるように、ロッドの弾力を利用してラインが常に張った状態でファイトを行なえば、フックが抜けてバレることはほとんどないのだ。ところが、シイラやスズキのようにジャンプをする魚の場合、ジャンプの際の反動でフックが抜けてしまうことがよくある。しかし、これはバーブレスフックだからというだけの問題ではない。たとえバーブが付いていても、フックを外されてしまう場合はよくあるものだ。これを解決するためには、ロッドを横に寝かして煽るといったテクニックがある程度は有効だろう。また、トレバリーのように顎の力が強い魚の場合には、ストライク後もしっかりと口を閉じているので、バーブレスフックであってもそう簡単にフックが外れることは少ないように思う。
このように、バーブレスフックを使ったからといって、必ず魚がバレ易くなるわけではない。また、アングラー自身のファイトテクニックによっても、バラシを少なくすることは可能である。
実際にはバーブレスフックのデメリットはそれほど大きくないのである。フックを外す際のメリットが確実に大きいバーブレスフックを使用するということは、スポーツアングラーにとっては、とても意味があるものといえる。特に、カツオやマグロなどのように、泳ぎ続けないと呼吸ができない魚をタグ&リリースする場合など、その魚を水中に戻した後に魚が自力で泳ぎ出すことができるかどうかがとても重要になってくる。
リリースを目的として釣りをする時には、素速くフックを外して、少しでも早く魚を水中へ戻してやるためにも、バーブレスフックの使用を徹底するべきではないだろうか。最初にも書いたように、魚をキープするのが目的ではなく、ファイト後にリリースするのであれば、是非とも意識してバーブレスフックを使うようにしたいものだ。

 

 

バーブレスの可能性。トレバリーの場合。

奥山文弥

やっと掛けた魚をバラしたくないという考え方と、できるだけ傷つけずにリリースしてやりたいという考え方は、一歩進んだアドバンスト・アングラーの心の中で、いつも戦いあっているものだ。ここであえてアドバンストと書いたのは、キャッチすることに必死で、まずリリースのことなど頭の中にないビギナーアングラーと区別するためである。すべてのアングラーが、技術的な面は別として、対象魚を思いやるアドバンスクラスにレベルアップしてほしいと思うからである。
この2つの考え方は、次々に魚がヒットするときでも、素速くリリースして手返しよく釣るアングラーと、バラシを気にしてもたもたし、結局ワンチャンスをものにできなかったアングラーとの差としても出て来る。
 
 

今回のテーマ、バーブレスフックについて考え、そして実行するにあたっては、アングラーの、魚に対する、そして釣りに対する考え方と、置かれている釣りの環境や経験にもより、いろいろな意見が交わされるだろう。
しかし私は可能な限り(我慢ができる限り)フックのカエシをペンチで潰し、バーブレスフックにして釣りをすることを薦めたい。

トレバリーの保護

  ランディングした魚の口からフックを外すとき、すんなりと外れてくれれば良いのだが、深く飲み込んでいたり、トリプルフックの場合などは、複雑に掛かっていたりして、「うわっ、血だらけになっちゃった」と思いながらも、強引にフックを外した。あるいは外そうとした経験が誰にでもあると思う。
釣りをしていてこんなことを言うのはヤボだろうけれども、そんなときに、魚に対して少し申しわけないと思ったりする。
リリースを前提とする場合、もしバーブレスフックだったら、魚がフックを深く飲み込んでいる場合はもちろん、簡単にフックは外れ、魚にそれほどダメージを与えることもないだろうと、そんなときにふと感じたりする。
ソルトウォーターの釣りをしていて、特にバーブレスフックの必要性を感じたのは、トレバリーである。南の海の珊瑚礁域の頂点に君臨するこのスーパーフィッシュは、いたって凶暴。トップウォータープラグを噛み砕かんばかりの勢いで、水面に炸裂するその姿は、これを経験したほとんどのアングラーの視覚を刺激し、興奮させ、頭の思考回路を混乱させる。
それゆえ、プラグをガップリと飲み込んでしまうことも多々あり、フックを外すのに苦労するどころか、リリース不可能にさえなってしまう。つまり殺してしまうということだ。殺し続ければ、いつかは釣りの対象にならないほど減少し、こんな魅力的なトップウォーターゲームが成り立たなくなる。
 

そんなわけで、この素晴らしいプレデターを、いつまでもこの美しい海に残したいと思うのは、アドバンスト・アングラーとしては当然のことである。そうは思っていても、私達はアングラーである以上、何らかの形で、海やその環境に影響を与えてしまっている。
その最たるものが、トレバリー釣りそのものである。
本当にトレバリーを保護するのならば、このテーマに執筆し、真剣に取り組んでいらっしゃる著名なアングラーの方々や、読者の皆さんのすべてが、トレバリー釣りを止めること。これが極論であり、最高なのである。そうすることによって、これから先、何尾ものトレバリーが守られることは、間違いないのだ。そして全員スクーバダイバーになっていただいて、トレバリーとの接点は、水中観察で楽しんでいただければ、新しい彼らの生態なども新発見され、大いに素晴らしいことだと思う。
例えば、10人のスクーバダイバーを満足させるには、1尾のトレバリーが、そのグループの前をゆっくり泳いでくれれば、全員が、トレバリーを見ることができる。しかし、10人のアングラーを満足させるには、最低10尾、バラす人もいるだろうから、もう少し多めに必要なのである。
いかがですか、あなたも釣りを止めて、スクーバダイバーになり魚の保護に少しでも、貢献するっていう考え方を持っては…。というわけにはまずいかない。そこでせめてダメージの少ないバーブレスフックを使用し、パーフェクトに近いリリースを心がけていくべきだと思うのである。
もしリリースされた彼らが、再びヒットすればそれは素晴らしいことだし、たとえそれに至らなくても、生き残った彼らの子孫が成長し、いつかまた私達を楽しませてくれることだろう。

トレバリー共和国パラオの例

私とトレバリーの付き合いは、ミクロネシアの西端、パラオ諸島からはじまった。パラオ諸島は、大小200余りの島々が巨大なバリアリーフに囲まれている。その外側は、ドロップオフと呼ばれる、垂直な壁と、シャローの珊瑚礁で形成され、内側も、広大なフラットからストラクチャーのようなチャネル、リーフが広がっている。
水中に潜ってみるとよく分かるのだが、海の中は非常に豊かで、小さな熱帯魚から、プレデターのバラクーダ、トレバリー、そしてハタなど、魚影の濃さはバツグンなのである。しかもそれが、保護区とか禁漁区というわけではなく、スポットのすべてがそうであるから、ダイバーにとっても、アングラーにとってもたまらない魅力なのである。

この海で次々にトップウォータープラグにアタックするトレバリーを釣っているうちに、私達は将来のためにトレバリーを守らなければならないと考え始めた。豊かなパラオの海でさえ限界はある。クリスマス島のように、沈黙させてはならないのだ。
そこで、まずガイドやキャプテンを説得して、リリースに協力してもらった。フックが口の外側に掛かっている場合は、まだ外しやすかったが、ポッパーを飲み込んでしまったトレバリーには、なす術がなかった。
そしてあるとき、バーブレスフックを思い付いた。当然のように、簡単にバレるのではないかと恐れていたが、仲間の協力で、試みが繰り返された。
九州の悪友、津留崎義孝さん、芦屋のBBオヤジ田中秀享さんとチーム鬼反のメンバー諸氏、サンスイの渡辺正一さん、稲垣実さん、そしてフィッシュ&フィンズのメンバーには、心から感謝したい。
結果、カスミアジを含む、200尾以上のトレバリーがバーブレスフックによって釣られリリースされたが、ランドするという意味では、バーブレスフックは何ら支障がなかった。少なくとも、バーブレスだからバレたということは一度もなかった。かえってバーブレスにしたため、ストライク時のセットフックがしやすくなり、(トレバリーは、噛み付く力が強いので、口からフックポイントを引きずりだしてセットフックするのが時には困難である)スッポ抜けが少なくなったという利点も出てきた。
 
ホースを口に通して海水を流す。アフターランディングにおける配慮のひとつだ。
 
もし不幸にして、ラインブレイクしたとしても、バーブレスフックならば、魚が自らポッパーを外すというチャンスも往々にしてあるのではないかと期待が持てる。
私事で恐縮だが、最近のパラオでは、仲間のプロガイド達はトレバリーの100%リリースを目指し、バーブレスフックを取り入れるようになった。お客さんであるアングラーも、それを見てバーブレスを取り入れ始めている。
リリースをして、初めてトレバリーフィッシングがパーフェクトなものになる。という考え方が定着し始めている。死んで真っ黒になり、体表が、カラカラに乾いたトレバリーをボートの隅に置いておくなんて、これからは止めにしようではないか。
パラオで初めてトレバリーフィッシングを経験したアングラーのなかには、いきなりバーブレスで望む人もかなり増えた。ハネムーンで釣行し、生まれて初めて釣った魚がGTだった奥様も、写真を撮ってリリースしている。それも20kgクラスをだ。お祝いを述べると共に、末長くお幸せにと、心からお祈りしたい。
また、トロピカル初挑戦のバスアングラーのHさん、どうもありがとう。あなたがリリースした22kgのGTは、いつまでもパラオの海を泳ぎ続けると同時に、あなたの心の中をも泳いでいることだろう。また会いに行っていただきたい。
実行するのに苦労したパラオでのトレバリーのリリースだが、オーストラリアでは、当たり前のように行なわれている。
今では、ポナペやトラックでもキャッチ&リリースが定着しており、うれしい限りである。いつ行っても魚がいる釣り場、大切にしたいものだ。

バーブレスフックの使い方

現在市販のトリプルフックの中には、バーブレスのものは極めて少ない。したがって、私達は、ディバーブ(カエシを取る)作業をしなくてはならない。
ディバーブは、カエシをペンチなどで潰すか、ファイル(ヤスリ)で削り取るかの2通りが一般的である。
私は前者をお薦めするが、輸入モノのポッパーに最初から付いているカドミウムのフックは、カエシが大きく潰しにくい。仮に強力なペンチで潰したとしても、そこが大きく盛り上がるので、フッキングに影響が出るのではないかと、心配になってしまう。
そこで、国産のトリプルフックに交換することになるが、最近では、国産のトリプルフックにも良いものが数多くある。私は、がまかつや、インフィニのトリプルフックのカエシを潰して、交換している。これらのフックのカエシは小さいので簡単に潰れ、しかもポイントがシャープなので、フックを研ぐという煩わしい作業を省略してもよい。まさに一石二鳥だ。
トレバリーは、シイラやカジキのように、水面に踊り出てファイトしないから、セットフックしたら、ラインを弛ませずに、リーリングをすれば良い。ポンピングの際には、ロッドを早く倒しすぎると、ライン・スラックが出るので注意だ。
そして傷つけないためには、ランディングは、マウスギャフよりも、テイラー(編集部注:テイラーに関しては当ウェブ上の特集を参照。今後も関連記事を掲載予定)が望ましい。ボートに引き上げたら、ホースがある場合は、口からホースを突っ込んで、呼吸の手助けをする。なければ、バケツで水をかけて、トレバリーの体表が乾かないように努力する。フックを外すときには、グローブさえしていれば、手で簡単に外すことができる。

 
口の皮一枚でフックアップした状態。バレる時はバレるというヒラキナオリも時には必要!?
 

見習いたい実例

まだまだ一般的でないソルトウォーターのバーブレスだが、淡水の釣りの中では、ポピュラーになりつつある。もちろん魚を傷つけずにリリースするためである。
ヘラブナ釣りは、これの最たるものである。そのハリをスレバリと呼んでいるが、すべてバーブレスというのは素晴らしいことだ。他にも、渓流釣りでも、少しずつスレバリが増えてきた。
フライフィッシャーマンの間でも、バーブレスは浸透してきている。バレに対するフックのデザインまで考えているメーカーもあり、そこまでしてバーブレスフックを作ろうとする意図は素晴らしいことだと思う。
フライの本場、アメリカでは、トラウトを釣るのにバーブレスフック・オンリーの規則を持つ川もあるくらいだ。プライベートなエリアを流れるスプリングクリークにそんな川が多い。
一方カナダでは、あの究極の対象魚、スティールヘッドを釣る時でさえ、バーブレスを取り入れている。私もガイドの勧めで、バーブレスフックによるスティールヘッド・フィッシングを経験したが、それはそれは刺激的な釣りだった。
カナダの著名なアングラーから聞いた話だが、バーブレスフックを使用すると言うことは、キャッチ&リリースを速やかに行なう目的はもちろん、そのアングラーがどれだけ真剣になっているかの目安になるという。口では幾ら魚類の保護を謳っていても、バーブレスを使用できないうちは、普通のアングラーだということだ。
たいへん良い環境の中で釣りをするからこそ生まれて来る発想であるが、一日でも早くこんな考え方を持つようになりたい。全ての魚に対しては不可能でも、リリース可能な特定の魚だけでもそうしたいではないか。
読者の皆さんもぜひバーブレスが使用できる、ゆとりをもった釣りを心がけてはどうだろう。

 

 

バーブレスを使おう! なんて
わざわざ言っていた時代もあったなあ」と、
昔を懐かしむ日がいつか訪れますように……。

編集部

さて、今回のスポーツアングラーズ・ディベート「バーブレスの倫理学」はいかがでしたでしょうか。原稿を執筆していただいた4名の方々は、まさに『スポーツアングラーズ』の目標である「スポーツマインドとジェントルマンシップ」を兼ね備えた一流のスポーツアングラーと言えるでしょう。
以前、バハ・カリフォルニアのイーストケープにある「スパ・ブエナ・ビスタ」というフィッシングロッジを訪れた時のこと。イーストケープはカボ・サン・ルーカスと並びビルフィッシングで有名なエリアで、トローリング・アングラーはもちろんのこと、先鋭的なアメリカ人フライロッダーたちが訪れることでも知られています。
 
 

ロッジの周辺には荒涼とした不毛の土地が広がり、町らしい町も特にないため、ロッジの宿泊者はすべてアングラー。夜はコルテス海の潮騒を聞きながら食事をするのですが、その際、ロッジ側の粋な計らいにより、他の宿泊者たちと共に食事が楽しめるようになっています。テーブルにつく顔ぶれは毎日替わるので、3日もいれば皆顔馴染みです。人種は違っても、同じアングラー同志、会話は自然と弾みます。その日の釣果や前回来た時の自慢話で盛り上がるうちに、話題はいつのまにか他のテーブルのアングラーへ……。
たとえば、「向こうのテーブルの青いシャツの男、奴のグループはキャッチした魚をすべてキープしてるんだ。今日だって、ストライプト・マーリンを2本に、ドラド(シイラ)を3本、イエローフィン2本、全部持って帰ってきやがった。釣った魚全部ぶらさげて写真を撮りたいって支配人に頼んだそうだ。ドでかいクーラーを2つも持ってきてるらしいが、昨日キープした分だけでも充分だろうに。毎日あんなに魚を殺して、どうやって持って帰る気なんだ。」と陰口を言われるアングラーがいる一方で、「いやあ、隣のテーブルにいる昨日来たグループには感心するよ。300Lbのブルーマーリンをリリースしたそうだ。手ブラで帰ってきたもんだから、どうだって聞いたら、その300Lbの他にセイルとストライプもリリースしたって。もうビルフィッシュは充分に釣ったから、明日はルースターフィッシュを狙うらしい。素晴らしいアングラーだよ。」と誉めちぎられる人もいる。もちろん、魚を殺したほうのアングラーがバッグリミットに違反していたというわけではないのです。
人々が話題にしているのは、モラルや倫理といった次元の問題なのです。
このフィッシングロッジの話は一例にすぎませんが、アメリカでは一般に「スポーツアングラー」あるいは「スポーツフィッシャーマン」と呼ばれる釣り人の自覚が非常に強いという印象を受けます。「私は捕獲のために釣りをしているのではない。食べるための魚を釣っているのではない」という自覚、と言えばいいのでしょうか。それはほとんど誇りにさえなっています。
多くのアングラーが心配するバーブレスフックのデメリット(バレやすさ)が迷信であり、また少なくとも、魚に与えるダメージを極力抑えるという点では確実にメリットが大きいのなら、バーブレスフックを使用する場合に問題となるのは、バーブを潰すちょっとした手間と、ほんのわずかな勇気だけなのではないでしょうか。
今後、当ウェブではバーブレスフックを推進していくつもりです。ハリ先の本当に小さなこだわりかもしれませんが、大きな意味のあることだと信じています。

プライヤーによるディバーブ法

基本的には、ショップに行っても、バーブレスフックという商品は入手が難しい。淡水用のフライフックには見かけるのだが、フライフックでも海用となるとまず見当たらない。ましてや、ルアー用のトレブルフックなど言うまでもない。そこで必然的に自分でディバーブ(バーブを潰すこと)することになる。
ディバーブには、プライヤーで潰す方法とヤスリで削り取る方法がある。一般的なのはプライヤーで潰す方法で、イラストのようにして行なう。左は悪い例で、右が正しいディバーブ法。

レフティー・クレー氏によれば、左図のように横からプライヤーを当てるとバーブが折れてしまうことがあるという。それを避けるためには、右図のようにポイント側から上下にプライヤーを当て、フックをしっかり支持しながらバーブを潰すこと。  
 
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