内部形質
体腔背壁の筋肉は腹腔へ向かって著しく隆起していて腹腔は狭い。肝臓は3葉よりなり、中葉が最大。肝臓の腹面に多数の脈管条がならぶ。皮膚血管系はよく発達し、第5脊椎骨の位置に始まり後走する。
頭蓋骨の篩骨域は幅広い。上後頭骨隆起の後端は第2脊椎骨上に達す。左右の翼楔骨は腹面で接合し眼窩の中央部まで突出するが、副楔骨に接着するようなことはない。基底後頭骨の後突出部の後縁はほぼ直角。
完全血管弧は第10脊椎骨に始まる。血管弧の先端はやや側扁する。腹椎骨の後血管関節突起は短く、あまり突出しない。側突起はあるがあまりよく発達しない。椎体下孔は小さく、第22脊椎骨に始まる。第1血管棘は棒状。脊椎骨数:18+21=39。
最大体長
大型のマグロで体長190cm前後に達す。
分布
オーストラリア西沖のインド洋東部からオーストラリア南岸・南東岸・ニュージーランドを経て、南太平洋東部のペルー沖まで分布する。すなわち、インド・太平洋の南半球水域に広く分布する。
付記
本種は1952年頃からオーストラリア西岸沖のインド洋でまとまって漁獲されるようになり、インドマグロと一般に呼ばれてきた。その後オーストラリア東岸沖にも漁場が開発され、ここで漁獲されるものはゴウシュウマグロと名づけられ、前者と区別された。しかし、これらはともに同種であり(三村・藁科 1962)、上記のように分布域が広いのでインドマグロとかゴウシュウマグロというような地域名を和名として用いるのは好ましくなく、かつ混乱のおそれがある。できれば種の特徴を生かすような和名を与えるのが望ましいが、適当な名がないので、分布が南半球に限られるという意味でミナミマグロを本種の和名として使用することをここに提唱する。
ミナミマグロは記録のうえでは標本が少なく、しばしばクロマグロとして、あるいはその亜種として取扱われてきた。1952年頃に日本漁船がインド洋東部に漁場を開発していらい、漁場は急速に拡張され、漁獲量も多くなり、日本でも市場をにぎわすようになった。たしかに本種はいくつかの分類形質においてクロマグロに類似するが、インド洋東部とかニュージーランド近海のように本種が漁獲される海域でクロマグロも漁獲されることを考慮に入れ、種々の分類形質を比較検討したところ、本種を種として扱うのが望ましいという結論に達した。
SERVENTY(1956)はT. phillipsi JORDAN and EVERMANNを原記載の写真から判断してT. maccoyiiと同種であろうとしているが、この写真の標本の胸鰭がやや短いようなので、ここでは一応T. thynnusつまりクロマグロと推定した。 |