学名:Istiophorus albicans(Latreille、1804)
分類:脊椎動物門、硬骨魚綱、スズキ目、カジキ亜目、マカジキ科、バショウカジキ属
(Vertebrata,Osteichthyes,Perciformes,Xiphioidei,Istiophoridae,Istiophorus)
方言:日本に水揚げされる本種をバショウカジキI,platypterusと区別するため標準和名としてニシバショウカジキが提唱されているが、まだ両種を区別しないで、バショウ、バショウカジキ、バレン、バリンなどと呼ぶことが多い。
各国語:Agulhao,Agulhao bandeira, Agulhao de vela, Bicudo, Guebucu(ブラジル);Sailfish(カナダ);Abanico, Aguja de abanico, Agu ja voladora, Bicuda, Prieta, Voladeira(キューバ);Voilier, Voilier de I'Atlantique(フランス);Adzietekwesi, Fetiso, Onyan kle(ガーナ);Fetiso(黄金海岸);Pez vela, Volador(メキシコ);Espadon(モロッコ);Zegal-fish(オランダ);Bicuda, Espardarte veleiro, Peixe de vela, Veleiro, Veleiro do Atlantico(ポルトガル);Espadon, Oumbajhe(セネガル);Pez vela, Pez vela del Atlantico(スペイン);Sailfish, Seilvis(南アフリカ共和国);Sailfish(連合王国);Atlantic sailfish, Sail, Sailfish, Bayonestfish, Spindle beak(アメリカ合衆国);Parusnik, Parusnikryba(ソ連);Aguja vela(ベネズエラ);Bala hoo, Billfish, Mere, Ocean gar, Sailfish, Squadon(西インド諸島各国一般);Pez vela(パナマ);Sailfish(バージン諸島);Sailfish(グレナダ、カリブ海ウィンドワード諸島);Atlantic sailfish(モンセラフト、カリブ海リーワード諸島);Atlantic sailfish(FAO標準英語名);Voilier de I'Atlantique(FAO標準仏語名);Pez vela del Atlantico(FAO標準西語名)
もう遠い昔の話になるが、1965年と66年に水産庁調査船照洋丸に乗って南大西洋からカリブ海にかけて、延縄によるマグロ、カジキ類の生態調査に参加した。延縄は朝の6時に投縄を開始して8時頃には延べ終わる。遅い朝食をすませて10時頃から揚げ縄を始めるのだが、終わりの方にかかったカジキ類は揚げ始めた縄にまだ元気に生きていて、ラインホーラーで幹縄をぐんぐん巻いてひき寄せると、逃がれようとして必死にジャンプする。一度遠くにニシバショウカジキのすごい抵抗を望見したが、舷側にひき寄せられるにつれて下に潜ってしまい、眼近にその佳麗なジャンプを見ることはできなかった。が、しかし舷側近くで見たその色彩の美しさは今でも眼のあたりに思い浮かべることができる。縄から逃がれようと必死の魚が浅く浮かびまた深く潜る。その度に色彩は鮮やかに変化して、悲しくも美しかった。カジキ類の中でもニシバショウカジキやバショウカジキは比較的弱く、大型のシロカジキ、クロカジキ、メカジキなどは力があり過ぎて暴れ回り、枝縄を幹縄もろともグルグル巻きにもつれさせ、絡まって自ら死んでしまうことがよくあった。
スミソニアン研究所の自然史博物館魚類部に留学していた1981年の9月、フロリダとプエルトリコにフィールド調査に行った。年来の友でカジキ研究者のロビンス教授とダシルバ博士をマイアミ大学に訪ねた。夕暮の学内のカフェテリアで世界的な頭足類研究者のボス教授と奥様のナンシーさん(彼女もクロタチカマス類の仔稚魚の研究者として有名である)を紹介していただき、楽しいひとときを過ごした。ボス教授はスポーツフィッシング愛好家でニシバショウカジキの生態や行動についてもくわしく、「フロリダではニシバショウカジキの産卵は比較的沿岸域の浅いところで行なわれるらしく、1尾の雌に2〜3尾の雄が追尾行動をするのを見かけることがある」とか「必ずしも表層ばかり遊泳するのではないらしい。胃内容物には、時として表層性のものと底生性のものが現われる」などという興味深いお話をうかがうことができた。IGFAの本部のあるフロリダ州はゲームフィッシングが特に盛んで、マイアミ大学やフロリダ大学、それに日本の水産庁の水産研究所にあたるNational Marine Fisheries Serviceの研究所では、ゲームフィッシュの生態やゲームフィッシングそのものの研究が盛んに行われている。当時、フォートローダーテールにあったIGFA本部にハリー会長を訪ねに連れて行ってくださったのもロビンス教授であった。
今は亡きハリー会長からはその時、ゲームフィッシングについていろいろと教えていただいた。そしてなによりも印象強く残ったのは本部内にある完備したゲームフィッシュ関係の図書室であった。
もう一度ゆっくりとあの図書室で思う存分研究してみたいものである。
《B》では、ニシバショウカジキの生態、大きさ、生息域、分布、漁法、漁場、利用、備考、生態イラストについて紹介します。 |